サハラの呼び声: 5. 命の天秤

「アンドレ。お前は死が怖くないのか。いつそんなつまらん悪党どもに殺されるかもしれないのに、それでも護衛もなしに行くのか」 「マサ、俺は神を信じている。神に全てを委ねて楽しく行くだけだ。」 「そんな言葉は聞きたくない。だが絶対に死ぬな。お前が死んだらこのプロジェクトは終わる。何としてでも後に続く人々に道を残せ」 電話越しに、私はアンドレと怒鳴りあっていた。 危険を顧みずにブルキナファソ東部の実験農園 […]

サハラの呼び声: 4. 第一回アフリカシンポジウム

「バスターレ、マサターレ。ハハーッッ」 バスタレは会うたびに自分の名前と私の名前をかけて意味不明のジョークを飛ばした。まるで高校生の飲み会だ。 しかし、ちゃらんぽらんなようでいて幾つものバー(Maquis)を経営し、女の子たちを仕切り、商売の羽振りは良さそうだった。ここでは陽気さは美徳の一種だ。 「マサターレ、俺とお前は兄弟だ。この街で飲んだやつはみんな兄弟になる決まりなんだ」 やや強引な兄弟宣 […]

サハラの呼び声: 3. ファダへ

最初の滞在以降、ブルキナファソでは新たにクーデターが勃発し、度重なる反乱部隊と政府軍の衝突で、首都は騒然となっていた。 私が滞在したすぐそばのホテルでは大規模なテロ事件が発生し、銃撃戦の末30人の滞在客が犠牲になった。 政府筋の情報は軒並み危険信号を並べ、現地の状況は国際社会から閉ざされていた。 しかし、私の手元にはアンドレやアランからの情報が届いていた。民衆が何を考え、何に怒り、何を守る戦いであ […]

サハラの呼び声: 2. 何が起きている?

日本に帰って数週間すると、参加者の一人からメールが届いた。 「協生農法に興味がある。是非、うちの団体で実験してみたい。」 後に共にサブサハラに協生農法研究所を設立することになるアンドレ・ティンダノだ。 先ず実験地の条件を聞いた。そして現地の気候データを調べ上げた。植生に関して意見交換しつつ、幾つかの具体的なアドバイスをメールで数週間にわたって指示した。 それからしばらく彼からの連絡が途絶えた。 数 […]

サハラの呼び声: 1. 砂漠の祈り

「サハラの呼び声」は、2017年7月より2018年4月まで、SonyCSLのメールマガジン「T-pop News」に当法人代表の 舩橋真俊 が連載したノンフィクション小説です。 五井平和財団における講演会と連動して、協生農法のアフリカにおける実践の始まりを伝えるコンテンツとして、第一部を公開します。 ——————— […]

寄付金使用報告について

社団法人シネコカルチャーにお寄せ頂いた寄付金は、主に以下の用途で使用させて頂く予定です。 ・当社団の講師が講演会などで出張する際に、協生農法の普及にとって重要な僻地など、場所によって交通費に大きな差が出る為、主催者側の経済事情を考慮した経費補填。 ・当社団メンバーが公開データを取得するために運営補助を行う協生農園の種苗代・農機具代の補填。 ・協生農法の科学的研究成果などをまとめたポスターなどのマテ […]

エジプト視察(9)番外編:Sharm El Sheick – モーセの十戒とサンゴ礁

トップ画像:シナイ半島の海陸の様子の対比。 CBD-COP14で訪れていたSharm El Sheickは、Suezの対岸にあるシナイ半島の南端にあります。 海に面したリゾート地ですが、陸上にはほとんど植生が無い岩山だらけで、旧約聖書でモーセが「十戒」を授かったと言われるシナイ山があります。 一方で、一歩海に入った浅瀬はカラフルなサンゴと固有種に満ち溢れた豊かな海洋生態系があります。 Sharm […]

エジプト視察(7):Alexandria, Suez

Cairo滞在の合間を縫って、地中海沿岸のAlexandriaと紅海側のSuezまで足を運びました。 Alexandriaの場所: ナイルデルタの西側に位置しています。 トップ画像は夕暮れ時の Alexandria 地中海沿岸の景色です。 ナイルデルタは植生があるので蒸散による雲形成サイクルがあるのでしょう。間欠的に強い雨が降ります。 カイロから車で3時間ほどですが、全く別桁の降水量があります。風 […]

エジプト視察(6):Cairo(農業編)

カイロ近郊での農業視察編です。 ギザより更に南へ下ったところにある、Abu Sir(地図中で赤く囲まれた地区)にやって来ました。 小規模農家が連なっており、その中の一つを訪問して色々な話を聞くことができました。 夜明け前に水牛、牛、ロバなど家畜を10頭ほど連れてきて、1日農作業し、夕方近くの家まで家畜とともに帰るそうです。 水牛舎の中の様子。見慣れぬ人が来て少し戸惑っていましたが、アルファルファや […]

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