サハラの呼び声: 2. 何が起きている?

サハラの呼び声: 2. 何が起きている?

日本に帰って数週間すると、参加者の一人からメールが届いた。
「協生農法に興味がある。是非、うちの団体で実験してみたい。」
後に共にサブサハラに協生農法研究所を設立することになるアンドレ・ティンダノだ。
先ず実験地の条件を聞いた。そして現地の気候データを調べ上げた。植生に関して意見交換しつつ、幾つかの具体的なアドバイスをメールで数週間にわたって指示した。
それからしばらく彼からの連絡が途絶えた。

数ヶ月後、アンドレから一通の封書が届いた。
「協生農法の導入と発展のために、ブルキナファソまで来て欲しい。我々の土地はすでに伝統的な農業に破壊されて久しく、このままでは環境破壊による滅亡の危機に瀕しているー」
差し迫った、切実な内容だった。
追って、メールで実験結果の報告が届いた。

数字の山と見たことのない植物名で埋め尽くされているデータ。
あれだけの指示でよくここまでと感心しながら、解析に取り掛かった。

月額1000ユーロ相当の売り上げ。
500㎡の実験地で、わずか数ヶ月でアンドレが叩き出した数字だ。それ以降もコンスタントにこのレベルを維持している。
いくら理論上協生農法が通年高頻度で収穫可能だとしても、これは多すぎる。第一、現地の経済状況と桁が合わない。
月額1000ユーロが、現地でどれだけの価値をもっているかを考えてみよう。
ブルキナファソの平均国民所得にすれば20倍、
首都における貧困水準に比べれば50倍の値である。計算すれば、わずか10㎡の協生農園が、首都において一人の人間が生活するのに必要な最低賃金を産出してしまうというのだ。
政府機関から慣行農業の生産性データを取り出してきて比べると、実に40倍ー150倍の値である。何度も計算過程や通貨の変換を見直した。それでも数字は明確に同じ値を示し続けている。

「これは多すぎる。解析結果と計算過程を共有するから、間違いがないか検査してくれ」
すぐにアンドレから返事が来た。
「マサ、この結果はすべて正しい。我々もびっくりしている。協生農法は、こちらではマジック農法と呼ばれている!」
添付された画像には、1年前までは砂漠化して草一本生えなかった土地が、食用植物で満ち溢れた豊かなジャングルに変貌を遂げていた。その数は、実に150種に及んだ。

協生農法により砂漠から回復した農地。左:実践一年経過後 右:自然放置した対照区画

ー続くー