伊勢・茅原協生茶園造成(1) 茶刈り

伊勢・茅原協生茶園造成(1) 茶刈り

コロナで国内の移動が少なかった一年でしたが、11月末に(株)桜自然塾が管理する伊勢・茅原谷にある茶園の下調べに訪れました。
ほぼ耕作放棄されていた茶園ですが、桜自然塾が毎年茶の木の剪定や草管理などを行って肥料成分の残留を抜き、数年が経過したのでこれから徐々に協生農法を導入するための植生改造を行なっていきます。
(社)シネコカルチャーは、これまでSonyCSLで研究してきた知見をもとに、新しい協生茶園のデザインに協力していく方針です。

管理前の茶園の様子。

間から背丈の大きいセンダングサなどが生えて立ち枯れており、茶の木もゆっくりですが旺盛に成長してきており、このまま放置すると地上部が大きくなりすぎて茶の木が弱るそうです。そこで、年に数回行うという茶の木の刈り込みを行います。

まずは茶の木の列と列の間の草刈りを、手押しのエンジン付き刈り込み機で行います。

どんどん通路を刈っていきます。

このように、茶の木と木の間の通路だけが、シャープにきれいになりました。

次はキャタピラ付き全自動の茶刈り機の出番です。

通常はこの機械の後部に袋をつけて刈った茶葉を収穫しますが、今回は茶の木の剪定だけなので刈りっぱなしで茶葉は通路に落とします。

途中まで刈った列を見ると、どのくらいの長さで剪定しているのかがわかります。

お昼休憩には、イナダを血抜き・真空処理して熟成させた刺身と、イノシシの角煮と、スズキの味噌焼きなど、豪華な海山の食材をいただきました。

(※このような協生理論に則った食材のランチは、桜自然塾の講習会で随時体験していただくことが可能です。)

合間に生えている背が高すぎる草は、人手で除去しました。

根が細かくびっしりと張っています。これを引き抜かずに地上部だけ刈って放置すると、やがて死んだ根が分解されて協生農法で重要な土壌の「練炭構造」が出来上がります。

写真撮影のために一部を引き抜きましたが、残りは抜かずに地上部だけ刈り取り、根部は土壌構造形成に活用することにしました。

刈り込み作業が終わった後の茶園。表面の薄い緑の若葉が刈り取られて、全体的に濃い緑色になりました。

今回は機械での茶葉の収穫は行いませんでしたが、今後のクラフトティー作りの研究のために、一部刈り落とした茶葉を持ち帰ります。

茶刈りが終了した後、茶園の横にある茅原協生農園へ植生と土壌の調査に向かいました。

主に山水を引き込んだ農園区画を中心に、複数の場所で秋冬野菜の混生密生マルチが形成されています。この時期の協生農法に特徴的な光景の一つです。

特にカブや壬生菜がたくさんできていました。

密生度合いに応じて、小さいうちからも継続的に間引き収穫していきます。

一段上の一本だけ水路を通した農園区画でも、秋冬野菜の混生密生ニッチが形成されていました。

夏場はマムシが大量に生息していた場所ですが、秋になり気温も下がったため安全に歩けます。

茅原農園の土壌を分析するために、植生の異なる場所から土を採取しました。

帰り道に、崖の断面から付近の林(人工的な単植林)の土壌構造を観察。

付近の環境から、自然放置した場合の表土の厚さや性質など、多くの情報を読み取ることができます。

桜自然塾が運営するゴーリキマリンビレッジに帰ってからも、夜遅くまで作業は続きました。
採取してきた土壌の分析。

茶葉を仕分けして、枝と葉を分け、クラフトティーを作る準備。

機械化・自動化することで失われてきた、生身の作物や自然環境とじっくり向き合う豊かな時間を、今後の茶園の展開プランを語り合いながら贅沢に過ごすことができました。

ーーーーーー 番外編 ーーーーーー
以下は社団のナビゲーターであり、「協生理論学習キット」の制作チームの福田さんが、今回持ち帰った茶葉を加工して作ったクラフトティーの様子です。

持ち帰るのに一昼夜かかった為、多少酸化(お茶用語だと発酵)してしまったチャノキの生葉
まずセイロで蒸します
ホットプレートで水分を飛ばしつつ揉みます

だんだん減ります
素手で扱っていると、手は茶渋でペトペト、黒々してきます
このくらいの仕上がりにしました。今回は成長してある程度固くなった茶葉を使いましたが、若葉だともっと細くなったりするのかもしれません
ティーバッグに入ってそうな砕けたサイズの茶葉もできました

この後、さらに発酵過程を加味したウーロン茶や紅茶へと、福田さんの探究は続いているようです…