新潟県にて協生農法の説明会を開催
- 2018.09.10
- 活動報告
報告が遅くなってしまいましたが、6月に当法人の太田が講演させていただいた縁で、(株)マルト長谷川工作所の長谷川会長をはじめとした有志の皆様に再びお招きいただき、8月10日に新潟県にて協生農法についての簡単な説明会をさせていただきました。
まず長岡市和島にあります和島トゥー・ル・モンド(廃校となった築85年の小学校の校舎をリノベーションした複合施設)の教室において、初めての方向けに前回講演の内容を簡略化してお話しました。多数のご質問をいただき、意義のある議論ができたと思います。
議論内容1:
主に聞かれた内容は、実際に協生農法を始めるにあたって何をいつ植えたらいいか、どう始めたらいいか、自分の条件ではどうすればよいか、普通の市販の種を使っていいのか、などという、協生農法の実際の作業に関するものでした。個人的には、協生農法を具体的に行おうとする方々からよく聞かれる質問です。
前提として、当法人は協生農法に関する研究結果の報告・社会への還元が主な業務であって、細かい農法指導に関しては協生農法実践マニュアルあるいは伊勢市にある(株)桜自然塾さんにあたっていただくことになります。
その上で簡単に申し上げますと、「何を植えたらいいかはその人が何を作りたいかによる」という前提をまずおさえておいていただきたいです。協生農法は決まった作物を植えるわけではなく、実践する人間によってバラエティに富んだ選択肢がありえます。もちろん、その土地・気候・その他の条件も加味して植生戦略を練る中で、具体的な戦略が出てきます。
実践する場所の条件の中で、何を作りたいか、どういう農園にしたいか、管理に割ける時間や使える資金はどれくらいか、などによって自ずととるべき戦略は絞られてきます。
また、協生農法を既に実践されている方々のコミュニティである「協生農法友の会」で情報を交換することも可能でしょう。
質問を受ける中で、多くの答えは既に協生農法実践マニュアルに記述されており、それらをより具体的に説明しました。また、実際の農園の様子を見学するには、伊勢市にある(株)桜自然塾さんで開催している「協生農法講習会」まであたっていだけますと幸いです。
その後にそのメンバーで、施設に併設されたレストラン「Bague」におきましてランチをいただきました。
のどかな和島において、洗練されたサービスがこの値段で受けられるのか、というような素晴らしいレストランでした。元々はその小学校の音楽室だったという室内の雰囲気もとても良かったです。
その後は三条市に移動し、また新たなメンバーを加えてあんみつ屋カフェにて、協生農法関係のお話も含め色々と情報交換させていただきました。
議論内容2:
その中で、自然農法やパーマカルチャーなどの環境保全型農業とは何が違うのか?という話題にもなりました。
確かに、一見そうした農法はどれも似通っているように思えるでしょう。それらと比較した時に言える協生農法の明確な特徴は「超多様かつ超有用」を農園において目指すことです。従来の持続可能を目指した農業は農業自体の有用性を高めようとすると結局個々の産物の成長を優先し、生物多様性が低下するというトレードオフの状態を抜けきれていません。一方、協生農法はそれを根本的に乗り越えて、多様性を高めるほど有用性が高まるという方向へ農園生態系を構築するように動きます。その結果として生物多様性は、自然放置された状態よりも高まります。一見シンプルなようですが、生物多様性と生産性の両立は海陸の大きな循環の中で生物多様性が果たしている役割を科学的に捉えない限り実現は困難で、限られた圃場の中で個人の経験を積み重ねてもなかなかたどり着けません。個人的な経験値の集積の上に成り立っている他の農法と、生態学と農学を横断する科学的な定式化がなされている協生農法の明らかな違いの一つです。
その後一旦解散し、会長のご自宅(築80年だそう)、レコードのコレクションを見学させていただき、鬼ヶ島へ移動。ご主人のご自宅で営まれているお店にて夕飯をいただきました。
とても静かな場所で、たくさんの植物が生え、ヤギがいる落ち着くところでした。
ここでも新たなメンバーを加えてさらに情報交換、楽しい時間を過ごさせていただき、1日の日程を終えました。
少しずつ協生農法を知り実践する人が増えていっているのを実感しています。
前回に引き続き今回もお世話してくださった長谷川会長をはじめ、和島トゥー・ル・モンドの斎藤様、十日町からおいでくださり最後までお付き合いくださいました大出様御一行、参加されたメンバーの皆様に感謝申し上げます。
※今回長谷川会長より(株)マルト長谷川工作所の爪切りをいただきました。とても品質が高く、切った後のやすりがけが必要ないほど切断面が滑らかになります。