何故、研究航海か?(3)
- 2018.07.11
- 研究航海
小さなヨットを持続可能な技術の実験場にして、多様な生態系と社会の間でサバイバルしながら研究航海を行う。
方向性が見えてきたところで、他の団体の取り組みにも目を向けました。
私が兼任するJAMSTECでは、地球深部探査船「ちきゅう」を用いて、地球の構造や生命の起源に関する研究航海を行っています。
また、Tara Pacific号の研究航海は、大きなヨットに研究者を乗せて世界各地の海洋生態系、特に生物多様性の観測を行っています。Tara Pacificによって、世界各地の海の変化がレポートされるとともに、海にはまだまだ未知の生物多様性資源が眠っていることが判明してきています。
他にも、フランスのLow−tech labでは、小さなヨットに持続可能性にとって有益と思われる原始的な技術を積み込み実証実験するとともに、世界各地にある持続可能な技術を集める航海を行っています。
これらの最近の動向に対して、ダーウィンやレヴィ・ストロースが行った研究航海は、博物学と呼ばれ、非常に原始的な技術に基づいて当時では最新の科学的成果をあげるものでした。世界的に活躍した博物学者といえば、日本では南方熊楠が有名です。
それに対して、科学技術が高度化した今、科学研究と持続可能性の探求には労力割り当てのトレードオフが生じています。
最新の科学的データを得るには高精度な機材が必要ですが、細分化された測定方法で客観的なデータを得ても、それがすぐには持続可能な解決策にはつながりません。むしろ、持続可能性には原始的な技術で代替する方が資源の消費を抑えられる場合がほとんどです。
そこで、我々の研究航海は、最先端の人工知能などの科学技術とともに、サバイバルベースでの様々な体験知や原始的な技術も活用し、その上で持続可能性にとって意義のある視点からそれらの技術を評価し、持続可能な科学技術のあり方を探る方向に定めました。
トップ画像のように、それを科学技術の高度さの軸(横軸)と、最新の科学研究と持続可能性の探求の間の労力分配のトレードオフの軸(縦軸)の上に表示してみると、ちょうど地球深部探査船、Tara Pacific、Low−tech lab、そして博物学の先人たちと相補的な関係に位置しています。
また、協生農法の始祖である野人・大塚隆氏は、若き日にヤマハのリゾート開発部隊としてトカラ列島で生き抜き、そこから得た多くの体験知が協生農法の具体論の礎となっています。
詳しくは、野人ブログの「連載 東シナ海流」をご覧ください。
野人理論を理解するのに、海や船の理解は不可欠。
更に、今後の協生農法の展開地として南西諸島は重要な拠点です。
これらの理由から、研究航海の第一レグは南西諸島を中心とし、そのハイライトをトカラ列島に定めました。
いよいよ明日より、トカラに向けて北上を開始します。