第7回国際学会:Eco Summit 2024 にてシンポジウムを開催、口頭発表
代表理事の舩橋、研究員の河岡、吉川が、2024年12月14 – 19日に中国鄭州で開催された、第7回国際学会:Eco Summit 2024 にてシンポジウムを開催、口頭発表をしました。
以下はシンポジウム開催のアブストラクト・スコープ・各セッションの概要を日本語訳したものです。
Ecosummit 2024 のテーマ「持続可能で望ましい未来のためのエコ・シビライゼーションの推進」に沿って、本シンポジウムでは、日本、アフリカ、ラテンアメリカ、中国における最新の研究成果と実践事例を踏まえ、「拡張生態系(Ecosystem Augmentation)」に関する先駆的な進展を探求します。「Human Augmentation of Ecosystems(人による生態系の拡張)」というテーマのもとに、自然科学、人工知能(AI)、ESG経営などの分野を横断した視点から、ネイチャー・ポジティブな解決策を議論します。これらの取り組みは、生物多様性、健康、気候レジリエンスを持続的に高め、最終的には「自然・社会共通資本」の共有的形成に寄与することを目指しています。
このシンポジウムには、学術界と産業界の専門家が集結し、日本および中国のソニーグループ各社による持続可能な生態系のための技術的ソリューションの開発事例や、京都大学「社会共通資本と未来研究部門」による自然・社会共通資本の枠組み構築の最前線の研究が紹介されます。シンポジウムでは、基礎科学、革新的技術、そして各地域での新たな実践を取り上げ、生態系が自律的でレジリエントな存在として、人間の幸福と環境の安定を支える役割を強調します。
目的とスコープ
本シンポジウムの目的は、「エコシステムの拡張」がエコ・シビライゼーションの構築に果たす役割を多角的に検討することです。4名以上の登壇者によって、以下の主要テーマが議論されます。
科学的基盤と技術的アプローチ
まず、エコシステム拡張の科学的基盤として、「シネコカルチャー(Synecoculture)」を取り上げます。これは人為的に管理された生態系において、高い生物多様性と生産性を両立させるために開発された手法です。この方法では、植物種間の自然な相互作用を活用し、化学的投入物を使用せずに自律的な生態系を形成します。発表では、このシステムを支える生態学的原理やデータ、そして農業生産性が低下している地域への応用可能性について議論します。
データ駆動型マネジメントとAI統合
前例のない規模で生物多様性が脅かされる中、ビッグデータとAIの統合は長期的な生態系レジリエンスの鍵となります。本シンポジウムでは、AIとデータ解析を用いて生態系機能をモニタリングし、リアルタイムで最適化する事例を紹介します。これにより、ESGの優先課題に沿った適応的マネジメントが可能となります。ソニーグループ各社の実践例を通じて、生態知性と先進的分析技術を融合した新しい管理モデルを提示します。
グローバル・サウスにおける実践
環境課題が深刻化するグローバル・サウスにおいても、革新的な生態系拡張の実践が進んでいます。中国沿岸部では、生態系拡張が生息地劣化の緩和や海洋生物多様性への影響低減、地域の気候レジリエンス強化に寄与しています。これらの取り組みを他地域に展開する可能性についても議論します。
健康への影響と免疫関連の恩恵
最後に、拡張された生態系と人間の健康の関係性に焦点を当て、特に免疫関連疾患への影響を探ります。多様な生物環境への曝露が免疫機能に好影響を与えるという研究成果が蓄積されつつあり、生態系サービスを公衆衛生戦略として位置づける可能性が示されています。発表では、拡張された生態系が免疫機能異常に関連する慢性疾患の軽減に寄与する可能性を紹介します。
意義と展望
「Human Augmentation of Ecosystems」という概念は、人間社会と自然システムの共生関係を促進する、エコ・シビライゼーション実現に向けた変革的ビジョンを体現しています。
学際的な専門家による議論を通じて、本シンポジウムは、持続可能な生態系マネジメントの生態学的・技術的・社会的側面を包括的に検討する場を提供します。国際的な協働と革新的手法を通じて、拡張された生態系が人間のレジリエンスと持続可能な未来の基盤資産となる可能性を明らかにします。



